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【開発実績】複数店舗の業務効率化を実現するアパレル・小売業向け店舗統合管理システム開発事例

  • 開発部
  • 10月21日
  • 読了時間: 12分
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プロジェクト概要

アパレル・小売業界では、消費者ニーズの多様化やEC市場の拡大により、実店舗とオンラインを融合させたオムニチャネル戦略が不可欠となっています。


特に複数店舗を展開する企業では、各店舗の在庫状況・売上データ・顧客情報がバラバラに管理され、経営判断の遅れや機会損失が深刻な課題となっていました。


今回ご依頼いただいたのは、関東圏を中心に15店舗を展開するアパレルブランド様です。

創業12年、年商約18億円の中堅アパレル企業で、近年の店舗拡大に伴い、従来のExcelベースの管理体制では限界を迎えていました。


従来の運用では、各店舗が独自にExcelで在庫管理を行い、本部への報告は週次のメール送信という状況でした。

売上データの集計に毎月延べ40時間以上を費やし、在庫の偏りによる機会損失は年間推定約2,400万円に上っていました。


また、顧客情報が店舗ごとに分断されており、ブランド全体でのCRM施策が実施できない状態でした。


本プロジェクトでは、全15店舗の在庫・売上・顧客データをリアルタイムで一元管理できるクラウドベースの店舗統合管理システムを開発。

導入後6ヶ月で在庫回転率が1.4倍に改善し、売上データ集計業務は月40時間から2時間へ95%削減を達成しました。


さらに、顧客データの統合により、ブランド全体でのリピート率が12%向上するという成果を実現しています。


お客様が抱えていた課題


1. 店舗間で分断された在庫管理による機会損失

各店舗が独自にExcelで在庫を管理していたため、リアルタイムでの在庫状況把握が困難でした。

ある店舗で売り切れた商品が、別の店舗では余剰在庫として眠っているという事態が頻発し、販売機会を逃していました。


  • A店舗で人気商品が完売しても、在庫のあるB店舗から取り寄せる仕組みがなく、お客様を逃していた

  • シーズン終了時に大量の売れ残り在庫が発生し、セール率(値引き率)が年々上昇、粗利率を圧迫

  • 本部が各店舗の在庫状況を把握するのに最短でも2日かかり、適切な在庫移動の指示が出せなかった


2. 売上データの集計・分析に膨大な時間がかかる

月次の売上レポート作成のため、各店舗からExcelファイルをメールで収集し、本部スタッフが手作業で集計・統合していました。

この作業に毎月延べ40時間以上を費やしており、データ入力ミスも頻発していました。


  • 15店舗分のExcelファイルを毎月収集・統合する作業だけで丸2日を要していた

  • 店舗ごとにExcelのフォーマットが微妙に異なり、統合時にエラーが発生しやすかった

  • 売上分析に着手できるのが翌月中旬以降となり、タイムリーな施策立案ができなかった


3. 顧客情報の分断によるCRM施策の限界

顧客情報が店舗単位で管理されており、お客様が複数店舗をご利用されても、購買履歴を統合できませんでした。

そのため、ブランド全体での顧客理解や、パーソナライズされたアプローチが実施できない状態でした。


  • 同一顧客が異なる店舗で購入しても、別々の顧客として登録されてしまう

  • 顧客の購買パターンや嗜好を分析できず、効果的なDM施策が打てなかった

  • VIP顧客(年間購入額上位)の特定・優遇施策が店舗単位でしか実施できなかった


解決策:全店舗をリアルタイムでつなぐ店舗統合管理システム


システムの基本的な仕組み

本システムは、各店舗のPOSレジ・タブレット端末と本部の管理サーバーをクラウド上で接続し、在庫・売上・顧客データをリアルタイムで共有・管理する仕組みです。

店舗スタッフは専用タブレットアプリから簡単に操作でき、経営者・本部スタッフはPCのダッシュボードから全店舗の状況を瞬時に把握できます。


分かりやすく例えると:

  • クラウドサーバー = 全店舗の情報が集まる「本部の司令塔」

  • 店舗用タブレットアプリ = 各店舗と本部をつなぐ「ホットライン」

  • 管理ダッシュボード = 全店舗の状況が一目で分かる「コックピット」


従来バラバラだった各店舗の情報が、クラウド上の「司令塔」に自動で集約され、経営者は「コックピット」から全店舗の動きをリアルタイムで把握・指示できるようになりました。


主な機能と効果


1. リアルタイム在庫一元管理


何ができるか:全15店舗の在庫状況をリアルタイムで把握し、店舗間の在庫移動を効率的に行える機能です。商品のバーコードをスキャンするだけで、その商品が全店舗にいくつあるかを瞬時に確認できます。


  • 商品バーコードスキャンで全店舗の在庫数を即座に表示

  • 在庫が少ない店舗から多い店舗への移動をワンタップで依頼・承認

  • 設定した在庫下限値を下回ると自動でアラート通知

  • 本部から各店舗への一括在庫移動指示機能


お客様のメリット:

  • 「この商品、他の店舗にはありますか?」というお客様の問いに即座に回答でき、取り寄せ対応が可能に

  • 売れ筋商品の欠品を防ぎ、販売機会損失を年間約1,200万円削減

  • シーズン終了時の余剰在庫を最小化し、セール率を8%改善(粗利率の向上)


2. 売上データ自動集計・分析ダッシュボード


何ができるか:各店舗のPOSレジから売上データが自動でクラウドに送信され、本部ダッシュボードにリアルタイムで反映されます。

日次・週次・月次の売上レポートが自動生成され、商品別・店舗別・時間帯別など多角的な分析が可能です。


  • 全店舗の売上データがリアルタイムでダッシュボードに反映

  • 日次・週次・月次レポートをボタン一つで自動生成

  • 商品カテゴリ別、店舗別、曜日・時間帯別の売上トレンド分析

  • 前年同期比較、予算対比など経営判断に必要な指標を自動計算


お客様のメリット:

  • 売上データ集計業務が月40時間→2時間に削減(95%削減)

  • 翌月中旬だった分析開始が翌日朝には可能に、タイムリーな施策立案を実現

  • データ入力ミスがゼロになり、正確な経営判断が可能に


3. 統合顧客管理(CRM)機能


何ができるか:お客様の購買履歴を全店舗で統合管理し、ブランド全体での顧客理解とパーソナライズされたアプローチを可能にします。

会員カード(またはアプリ)でお客様を特定し、どの店舗でも過去の購買履歴を参照できます。


  • 顧客の全店舗購買履歴を統合し、一人のお客様として管理

  • 購買金額・頻度によるランク分け(ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ)

  • 顧客の嗜好(好みのカテゴリ・サイズ・カラー)を自動分析

  • 誕生日・来店周期に合わせた自動DM配信設定


お客様のメリット:

  • 顧客データ統合により、ブランド全体のリピート率が12%向上

  • VIP顧客(上位10%)の特定と優遇施策で、VIP顧客売上が25%増加

  • 店舗スタッフがお客様の好みを把握した接客が可能に、顧客満足度向上


技術的な特徴(専門用語を分かりやすく解説)


クラウドネイティブアーキテクチャ(AWS)

クラウドネイティブアーキテクチャとは:システムを自社のサーバー機器で運用するのではなく、Amazon Web Services(AWS)というインターネット上のサービスを活用して構築・運用する設計手法です。

自社でサーバーを購入・管理する必要がなく、利用量に応じた柔軟な拡張と、高い信頼性を実現できます。


イメージとしては、自社ビルを建てるのではなく、設備の整ったオフィスビルの一室を借りるような形です。


採用理由:

  • 店舗数が増えてもシステム処理能力を柔軟に拡張可能(現在15店舗→将来50店舗まで対応想定)

  • 24時間365日の監視体制と99.9%以上の稼働率保証

  • 災害時のデータバックアップが自動で行われ、事業継続性を確保

  • 初期投資を抑え、月額利用料として運用コストを平準化


リアルタイムデータ同期技術(WebSocket)

WebSocketとは:通常のインターネット通信では、画面を更新しないと最新情報が表示されませんが、WebSocketを使うと、データが更新された瞬間に自動で画面に反映されます。

LINEやSlackでメッセージがリアルタイムで届くのと同じ仕組みです。


店舗で売上が発生した瞬間に本部ダッシュボードに反映される、という即時性を実現しています。


本システムでの活用:

  • 店舗での販売・在庫移動が発生した瞬間に本部ダッシュボードへ反映

  • 本部からの在庫移動指示が対象店舗へ即座に通知

  • 複数店舗スタッフが同時に在庫情報を閲覧しても常に最新状態を表示

  • ネットワーク切断時も自動再接続し、データの整合性を維持


開発プロセスと期間

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フェーズ1:要件定義・設計(2ヶ月)

プロジェクトの成功には、お客様の業務を深く理解することが不可欠です。

本フェーズでは、本部スタッフや店舗マネージャーへのヒアリングを重ね、現状の業務フローと課題を徹底的に洗い出しました。


その上で、システム化の優先順位を決定し、基本設計・詳細設計を行いました。


主な活動:

  • 本部管理部門・営業部門へのヒアリング(延べ8回、計24時間)

  • 店舗マネージャー5名への業務フロー詳細ヒアリング

  • 既存Excel管理ファイルの分析とデータ移行計画策定

  • システム全体設計書・画面設計書・データベース設計書の作成


フェーズ2:開発・実装(6ヶ月)

設計書に基づき、本部用管理ダッシュボードと店舗用タブレットアプリを並行開発しました。

2週間単位のスプリント開発を採用し、定期的にお客様へ進捗を共有。


フィードバックを素早く反映することで、実際の業務に即したシステムを構築しました。


開発体制:

  • プロジェクトマネージャー:1名

  • システムエンジニア:2名

  • フロントエンドエンジニア:1名

  • UI/UXデザイナー:1名


主な活動:

  • 本部用管理ダッシュボード(Webアプリケーション)の開発

  • 店舗用タブレットアプリ(iPad対応)の開発

  • 既存POSシステムとのAPI連携開発

  • クラウド環境(AWS)の構築とセキュリティ設定


フェーズ3:テスト・移行・導入支援(2ヶ月)

システムの品質を担保するため、単体テスト・結合テストに加え、実際の店舗環境を想定した総合テストを実施しました。

また、3店舗でのパイロット導入を経て、全15店舗への順次展開を行いました。


各店舗への導入時には、スタッフ向け操作研修を実施し、スムーズな定着を支援しました。


主な活動:

  • 単体テスト・結合テストの実施(テストケース計850件)

  • 本部・店舗を想定した総合テスト(実データを使用)

  • パイロット店舗3店舗での先行導入・検証(2週間)

  • 全15店舗への順次展開(1週間あたり3店舗ペース)

  • 店舗スタッフ向け操作研修の実施(1店舗あたり2時間×2回)


投資対効果


開発費用

総額:1,680万円


内訳:

  • システム設計・開発:1,280万円

  • クラウド環境構築・セキュリティ設定:180万円

  • 既存POSシステム連携開発:120万円

  • 導入支援・研修:100万円

※上記は初期開発費用。別途、月額運用費(クラウド利用料・保守費)約15万円が発生。


導入効果(年間)


直接的効果

効果1:在庫最適化による機会損失削減 約1,200万円

  • 店舗間在庫移動の効率化により、人気商品の欠品率が65%低下

  • 欠品による販売機会損失を年間約1,200万円削減(推定)

  • シーズン末の余剰在庫削減により、セール率を8%改善


効果2:業務効率化による人件費削減 約480万円

  • 売上データ集計業務:月40時間→2時間(38時間/月削減

  • 在庫棚卸・報告業務:月20時間→5時間(15時間/月削減

  • 年間削減時間:636時間×人件費2,500円/時間=約159万円

  • 本部管理スタッフ1名分の業務を他業務へ振り替え可能(約320万円相当)


効果3:売上増加効果 約650万円

  • 顧客データ統合によるリピート率12%向上

  • VIP顧客施策強化によるVIP顧客売上25%増加

  • クロスセル提案精度向上による客単価5%アップ


年間総効果:約2,330万円


間接的効果


経営判断の迅速化

  • 売上データ分析が翌日には可能になり、タイムリーな施策実行を実現

  • 在庫状況のリアルタイム把握により、MD(マーチャンダイジング)精度が向上

  • 経営会議の資料作成時間が70%削減、議論の質が向上


顧客満足度の向上

  • 「他店舗に在庫があります」というご案内が可能になり、お客様の信頼感向上

  • 来店履歴を踏まえた接客により、顧客体験が向上

  • 顧客アンケートのNPS(推奨度スコア)が15ポイント改善


投資回収期間:約9ヶ月


初期投資1,680万円に対し、年間効果2,330万円。

約9ヶ月で投資回収が可能という試算となりました。


2年目以降は、月額運用費(約180万円/年)を差し引いても、年間約2,150万円の効果が継続します。


お客様の声

「システム導入前は、毎月の売上集計が本当に憂鬱でした。15店舗分のExcelファイルを集めて、フォーマットを揃えて、コピー&ペーストして…。丸2日かかる作業で、しかもミスが出ると最初からやり直し。正直、月初は残業が当たり前でした。 今回のシステム導入を決めた一番の理由は、担当のプロジェクトマネージャーさんが、私たちの業務を本当によく理解してくれたことです。最初のヒアリングで『なぜその作業が必要なんですか?』『本当に知りたい情報は何ですか?』と掘り下げてくれて、私たち自身も気づいていなかった本質的な課題を一緒に整理できました。 導入後の変化は劇的でした。今では朝出社すると、ダッシュボードに昨日の全店舗売上がグラフで表示されています。『A店舗の売上が先週より20%下がっている』とすぐに気づけるので、店長に状況確認の連絡をして、翌日には対策を打てる。以前は気づくのが2週間後、対策を打つ頃にはもうシーズンが終わっているなんてこともありました。 特に印象的だったのは、先日のセール期間中のことです。旗艦店で人気商品が午前中に完売したのですが、システムで見たら郊外店舗に在庫がありました。すぐに移動手配をして、翌日には旗艦店で販売再開。お客様からも『諦めていたのに買えて嬉しい』とお声をいただきました。以前なら確実に逃していた売上です。 このシステムは、単なる業務効率化ツールではなく、私たちの『目と耳』になってくれました。おかげで、データに基づいた経営判断ができるようになり、現場の勘と経験に頼っていた時代から大きく進化できたと感じています。」

(経営管理部 部長)


今後の展開


短期的な改善(6ヶ月以内)

  • EC(自社オンラインストア)との在庫連携機能の追加

  • LINEミニアプリとの連携による会員証デジタル化

  • 需要予測AIの試験導入による発注量最適化


中長期的な展開(1〜2年)

  • 店舗スタッフ向け接客支援機能の強化(顧客来店時のスマートフォン通知など)

  • 他ブランド(グループ企業)への横展開

  • 店舗立地分析・出店計画支援機能の追加


まとめ

本プロジェクトでは、複数店舗を展開するアパレル企業様が抱える「在庫の分断」「データ集計の非効率」「顧客情報の断片化」という3つの課題に対し、クラウドベースの店舗統合管理システムで解決策をご提供しました。


導入後6ヶ月で在庫回転率1.4倍、データ集計業務95%削減、リピート率12%向上という成果を実現し、投資回収期間は約9ヶ月という高いROIを達成しています。


アパレル・小売業界では、実店舗とECの融合、顧客体験の向上、データドリブン経営への転換が急務となっています。


本システムのような店舗統合基盤は、これらの変革を支える重要なインフラとなります。

複数店舗の管理にお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。


貴社の業務課題を丁寧にヒアリングし、最適なシステムをご提案いたします。

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