【開発実績】物件管理業務の効率化を実現する不動産管理システム開発事例
- 開発部
- 11月15日
- 読了時間: 10分
更新日:5 日前

プロジェクト概要
不動産業界では、物件数の増加に伴う管理業務の複雑化が深刻な課題となっています。
特に賃貸管理会社では、契約管理・入金管理・オーナー報告・入居者対応など多岐にわたる業務を少人数で回さなければならず、業務効率化が急務となっています。
今回ご依頼いただいたのは、関東圏で約1,200戸の賃貸物件を管理するA不動産管理株式会社様です。従来はExcelと紙台帳を併用した管理体制でしたが、物件数の増加に対応しきれず、契約更新の見落としや入金確認の遅れが発生していました。
また、オーナー様への月次報告書作成に毎月延べ40時間以上を費やしており、本来注力すべき営業活動や入居者サービスに時間を割けない状況でした。
本プロジェクトでは、物件・契約・入金・修繕履歴を一元管理できるクラウド型不動産管理システムを構築。導入後は月次報告書作成時間を90%削減、契約更新の見落とし件数ゼロを達成し、年間約800万円のコスト削減効果を実現しました。
お客様が抱えていた課題
1. 物件・契約情報の分散管理による非効率
複数のExcelファイルと紙の台帳に情報が分散しており、必要な情報を探すだけで多くの時間を消費していました。
物件情報はExcel、契約書は紙ファイル、入金情報は別のExcelと情報が分散
担当者によってファイルの保存場所や命名規則が異なり、情報検索に平均15分以上かかる
同じ情報を複数のファイルに転記する必要があり、転記ミスが月平均5件発生
2. 契約更新・入金管理の属人化
契約更新時期の管理や入金確認が特定の担当者に依存しており、担当者不在時に業務が滞る状況でした。
契約更新時期の把握がベテラン社員の記憶頼みになっており、更新案内の送付漏れが年間10件以上発生
入金確認作業を1名で担当しており、その社員の休暇中は確認が2〜3日遅れる
滞納者への督促タイミングが担当者の判断に委ねられ、対応にばらつきが生じていた
3. オーナー報告業務の負荷
毎月のオーナー報告書作成に膨大な時間がかかり、他の重要業務を圧迫していました。
約80名のオーナー様への月次報告書作成に、毎月延べ40時間以上を費やしていた
複数のExcelから数値を手作業で集計するため、計算ミスや転記ミスのリスクが常にあった
報告書のフォーマットがオーナーごとに異なり、作成・確認作業が煩雑化していた
解決策:業務を一元化するクラウド型不動産管理システム
システムの基本的な仕組み
本システムは、物件情報・契約情報・入金情報・修繕履歴・入居者対応履歴をすべてクラウド上のデータベースで一元管理します。
各情報は相互に紐づいており、物件を選択するだけで関連するすべての情報にアクセスできます。また、契約更新や入金期限が近づくと自動でアラートを発信し、担当者に通知します。
分かりやすく例えると:
物件データベース = 不動産管理の「住民台帳」
アラート機能 = 優秀な「秘書」が期限を常に監視
レポート自動生成 = 経理担当者が瞬時に「月次決算」を完了
すべての情報が一箇所に集約されることで、「あの情報はどこにあったか」と探す時間がなくなり、誰でも同じ品質で業務を遂行できる環境が整います。
主な機能と効果
1. 物件・契約一元管理機能
何ができるか:物件の基本情報から契約内容、入居者情報、修繕履歴まで、すべての情報を一画面で確認できます。
物件を選択するだけで、契約状況・入金状況・過去の修繕履歴・入居者対応履歴を即座に表示
契約書や重要事項説明書などのPDFファイルを物件・契約に紐づけて保存
物件の空室・入居中ステータスをリアルタイムで更新し、ポータルサイトとの連携も可能
お客様のメリット:
情報検索時間を平均15分から30秒に短縮(97%削減)
契約情報の転記作業が不要になり、転記ミスがゼロに
担当者が不在でも、誰でも同じ情報にアクセス可能
2. 契約更新・入金アラート機能
何ができるか:契約更新時期や入金期限を自動で監視し、担当者にメールやシステム内通知でアラートを発信します。
契約満了の3ヶ月前・2ヶ月前・1ヶ月前に段階的にアラートを自動送信
入金予定日を過ぎても入金がない場合、翌営業日に担当者へ通知
滞納が続く場合は、督促状の自動生成と送付履歴の管理が可能
お客様のメリット:
契約更新の見落としがゼロに(従来は年間10件以上発生)
入金確認業務を特定担当者に依存せず、チーム全体で対応可能に
滞納対応の標準化により、回収率が5%向上
3. オーナー報告書自動生成機能
何ができるか:月次のオーナー報告書をボタン一つで自動生成します。
当月の入金状況・空室状況・修繕対応などを自動集計してレポート化
オーナーごとにカスタマイズ可能なテンプレートを用意
PDF出力に加え、オーナー専用ポータルへの自動アップロードにも対応
お客様のメリット:
報告書作成時間を月40時間から4時間に短縮(90%削減)
手作業による集計ミス・転記ミスを完全に排除
報告書の品質が標準化され、オーナー様からの信頼度が向上
技術的な特徴(専門用語を分かりやすく解説)
クラウドネイティブアーキテクチャ
クラウドネイティブとは:自社でサーバーを持たず、インターネット上のサーバー(クラウド)を活用してシステムを構築・運用する手法です。サーバーの購入・設置・保守が不要で、必要に応じて処理能力を柔軟に増減できます。
採用理由:
初期のサーバー購入費用が不要で、月額利用料のみで運用可能
物件数が増えてもシステムの処理能力を柔軟に拡張できる
災害時のデータ消失リスクを軽減(複数拠点での自動バックアップ)
システムのアップデートやセキュリティパッチの適用が自動化
RESTful API連携
APIとは:異なるシステム同士がデータをやり取りするための「共通言語」のようなものです。
APIを活用することで、不動産ポータルサイトや会計ソフトなど、外部システムとの連携が可能になります。
本システムでの活用:
大手不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'Sなど)への空室情報自動連携
会計ソフト(弥生会計、freeeなど)との入金データ連携
銀行口座の入金情報を自動取得し、消込作業を効率化
将来的な機能拡張やシステム連携に柔軟に対応可能な設計
開発プロセスと期間

フェーズ1:要件定義・設計(2ヶ月)
現場担当者へのヒアリングを重ね、日々の業務フローを詳細に把握しました。
特に、属人化している業務や非効率な作業を洗い出し、システム化による改善ポイントを明確にしました。
主な活動:
経営層・現場担当者へのヒアリング(計8回、延べ24時間)
現行業務フローの可視化と課題の整理
画面遷移図・ワイヤーフレームの作成とレビュー
システム要件定義書・基本設計書の作成
フェーズ2:開発・実装(6ヶ月)
アジャイル開発手法を採用し、2週間ごとに動作するシステムをお客様に確認いただきながら開発を進めました。
早い段階から実際の画面を見ていただくことで、認識のずれを最小限に抑えました。
開発体制:
プロジェクトマネージャー:1名
システムエンジニア:2名
フロントエンドエンジニア:1名
UI/UXデザイナー:1名
主な活動:
2週間スプリントでの反復開発(計12スプリント)
各スプリント終了時のデモンストレーションと要望の反映
外部システム(ポータルサイト・会計ソフト)との連携機能開発
セキュリティ対策の実装(通信暗号化、アクセス権限管理など)
フェーズ3:テスト・移行・導入支援(2ヶ月)
既存のExcelデータや紙台帳の情報をシステムに移行し、本番運用に向けた準備を行いました。操作研修を複数回実施し、全社員がシステムを使いこなせる状態を目指しました。
主な活動:
単体テスト・結合テスト・総合テストの実施
既存データの移行(物件約1,200件、契約約1,500件)
ユーザー受入テスト(UAT)の実施と改善対応
操作マニュアルの作成と社員向け研修(3回実施、計15名参加)
本番稼働後2週間のオンサイトサポート
投資対効果
開発費用
総額:1,800万円
内訳:
システム設計・開発:1,400万円
データ移行・外部システム連携:200万円
導入支援・研修:200万円
導入効果(年間)
直接的効果
人件費削減効果:約600万円
報告書作成業務:月36時間削減 × 12ヶ月 × 時給3,000円 = 約130万円
情報検索・データ入力業務:月50時間削減 × 12ヶ月 × 時給2,500円 = 約150万円
契約更新管理業務:月20時間削減 × 12ヶ月 × 時給3,000円 = 約70万円
入金確認・督促業務:月30時間削減 × 12ヶ月 × 時給2,500円 = 約90万円
パート社員の残業削減:月40時間削減 × 12ヶ月 × 時給1,500円 = 約70万円
その他事務作業効率化:約90万円
滞納回収率向上効果:約200万円
滞納率の改善(5%→3%)による回収額増加
督促の早期化・標準化による回収期間短縮効果
間接的効果
営業力強化
事務作業削減により、営業活動に充てる時間が月平均40時間増加
新規管理受託物件が年間50戸増加(前年比25%増)
オーナー様からの紹介案件が増加
サービス品質向上
入居者からの問い合わせ対応時間が平均30%短縮
オーナー様への報告品質向上により、管理委託契約の継続率が98%に向上
従業員満足度の向上による離職率低下
投資回収期間:約2年
お客様の声
「導入前は、毎月の報告書作成が本当に憂鬱でした。月末になると残業が続き、ミスがないか何度も確認する作業に疲弊していました。特に物件数が1,000戸を超えたあたりから、Excelでの管理は限界を感じていました。 システム導入の決め手は、デモを見たときの『これなら現場が使える』という実感でした。派手な機能よりも、日々の業務に沿った設計になっていて、ベテラン社員も『これなら覚えられそう』と前向きな反応でした。 導入後は、報告書がボタン一つで出来上がるようになり、最初は『本当に合っているのか』と不安で手計算で確認しましたが、完璧に一致していて感動しました。今では報告書作成日が『確認の日』になり、作成作業はほぼゼロです。 印象的だったのは、新入社員が入社2週目で契約更新の案内業務を一人でこなせたことです。以前なら半年はベテランに付いて覚える必要がありましたが、システムがナビゲートしてくれるので安心して任せられます。 何より、残業が減って社員の表情が明るくなりました。空いた時間でオーナー様への訪問回数を増やすことができ、管理戸数も着実に伸びています。システム投資は正直悩みましたが、今では『もっと早く導入すればよかった』と心から思っています。」
(A不動産管理株式会社 管理部長 田中様)
今後の展開
短期的な改善(6ヶ月以内)
スマートフォン対応の強化(外出先からの物件情報確認・写真登録機能)
オーナー様向けポータルサイトの機能拡充(収支グラフ表示、書類ダウンロード)
入居者向けマイページの構築(契約内容確認、各種届出のオンライン化)
中長期的な展開(1〜2年)
AI活用による賃料査定機能の追加(周辺相場データとの連携)
IoT機器との連携(スマートロック、遠隔検針など)による管理業務のさらなる効率化
複数拠点展開に対応したマルチテナント機能の実装
まとめ
本プロジェクトでは、Excel・紙台帳による分散管理から脱却し、物件・契約・入金情報を一元管理できるクラウド型不動産管理システムを構築しました。
属人化していた業務を標準化し、アラート機能による見落とし防止、レポート自動生成による工数削減を実現しています。
導入後は月次報告書作成時間90%削減、契約更新見落としゼロ、年間約800万円のコスト削減効果を達成しました。
業務効率化により生まれた時間を営業活動や入居者サービスに充てることで、管理戸数の増加にもつながっています。
不動産管理業務のDX推進をご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。




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