移行すべき?まだExcel?|5分で分かる「Excel運用の限界」スコアリング
- 開発部
- 1月16日
- 読了時間: 9分
更新日:1月27日

こんにちは!株式会社雲海設計の技術部です。
この記事は現場責任者(部門長・チームリーダー・業務改善担当) の方に向けて書いています。
「Excelでの管理、正直キツくなってきた…」と感じつつも、システム移行の稟議を通すほどの根拠がない。
かといって、このまま放置して事故が起きたら自分の責任になりかねない——そんなモヤモヤを抱えている方が対象です。
本記事を読むことで「移行すべきか・継続でいいのか」を感覚ではなく定量で判断し、社内で検討を開始するための材料が手に入ります。
この記事の結論
Excelは万能ではないが悪でもない。 「規模」「頻度」「関係者数」で最適解は変わる。
5つの観点(同時編集・監査ログ・権限・参照整合性・障害復旧)で
スコアリングすれば移行判断は"数字"で語れる
判定結果が「システム化優先」でも、いきなり大規模開発は不要。
まずは要件整理から始めれば手戻りなく進められる。
Excel限界スコア診断(Yes/Noで判定)
まずは直感で答えてみてください。所要時間は約5分です。
テキストフローチャート
【START】そのExcelファイルは複数人で同時に開くことがありますか?
※OneDrive/SharePoint上で共同編集できていても、
競合・待ちが起きるなら“実質同時編集リスクあり”として判定してください
│
├─ Yes → 「編集できない/競合による手戻り」が月2回以上ある?
│ ├─ Yes → ⚠ 同時編集リスク【高】→ Q2へ
│ └─ No → 同時編集リスク【中】→ Q2へ
│
└─ No → 同時編集リスク【低】→ Q2へ
【Q2】過去の変更履歴を「誰が・いつ・何を変えたか」追跡できますか?
│
├─ Yes → 監査ログリスク【低】→ Q3へ
└─ No → 過去に「誰が消したか分からない」トラブルがあった?
├─ Yes → ⚠ 監査ログリスク【高】→ Q3へ
└─ No → 監査ログリスク【中】→ Q3へ
【Q3】「このシートは○○さんしか触らないで」という暗黙ルールがありますか?
│
├─ Yes → そのルール、破られたことがある?
│ ├─ Yes → ⚠ 権限リスク【高】→ Q4へ
│ └─ No → 権限リスク【中】→ Q4へ
└─ No → 権限リスク【低】→ Q4へ
【Q4】別シート・別ファイルを参照する数式が10箇所以上ありますか?
│
├─ Yes → 参照先のファイル名やシート名を変えて壊れた経験がある?
│ ├─ Yes → ⚠ 参照整合性リスク【高】→ Q5へ
│ └─ No → 参照整合性リスク【中】→ Q5へ
└─ No → 参照整合性リスク【低】→ Q5へ
【Q5】もしそのExcelファイルが消えたら、復旧手順は明文化されていますか?
│
├─ Yes → 復旧手順を実際に試したことがある?
│ ├─ Yes → 障害復旧リスク【低】→ 判定へ
│ └─ No → 障害復旧リスク【中】→ 判定へ
└─ No → ⚠ 障害復旧リスク【高】→ 判定へ
スコアリング表(5観点×0〜5点)
フローチャートの結果を以下の表で点数化してください。
観点 | 0点(リスク低) | 2点(リスク中) | 5点(リスク高) |
①同時編集 | 単独利用 or 競合なし | たまにぶつかるが 回避できる | 月2回以上 「開けない/競合」 |
②監査ログ | 変更履歴を追跡可能 | 履歴はあるが網羅的でない | 「誰が変えたか分からない」発生 |
③権限設計 | 技術的に制限できている | 暗黙ルールで運用 (破られていない) | ルール違反・誤編集が発生済み |
④参照整合性 | 参照数式なし or 単一ファイル完結 | 複数参照あるが壊れた経験なし | 参照切れでデータ破損の経験あり |
⑤障害復旧 | 手順が明文化& テスト済み | 手順はあるが未テスト | 手順なし・担当者の記憶頼み |
目安:同時編集の競合が月2回を超えると「回避のための声かけ・待ち・後追い確認」が“習慣化”し、事故確率と固定ロスが上がりやすくなります。
※自社に合わせて「月1回」や「週1回」に調整してOKです。
合計点による判定
合計点 | 判定 | 推奨アクション |
0〜6点 | Excel継続OK | 現状維持。ただし年1回の棚卸し推奨 |
7〜14点 | 部分移行/ガードレール必須 | 高リスク観点のみ対策。 運用ルール明文化&バックアップ強化 |
15〜25点 | システム化を優先検討 | 業務システム or SaaS導入などの検討開始を推奨 |
観点別解説(5つの観点を深掘り)
①同時編集
項目 | 内容 |
よくある症状 | 「○○さんが編集中です」で待たされる / 競合の解消に手戻りが出る / 別名保存して後でマージする“職人技”が発生 |
起きがちな事故 | 上書き消失、マージ漏れによる二重登録・欠損 |
現場でのチェック方法 | 1週間開けない・競合・手戻りが起きた回数と時間(分)を記録 |
解決の方向性 | 共同編集可能な運用へ(OneDrive/SharePoint/Google Sheets) または排他制御のあるSaaS/業務システム |
稟議で使えるフレーズ:「同時編集の待ち時間が月○時間発生しており、人件費換算で年間○万円のロスです」
ロス換算一例
年間ロス(円)=(待ち・競合解消時間h/月)×(関係人数)×(平均人件費円/h)×12
②監査ログ
項目 | 内容 |
よくある症状 | 数字がいつの間にか変わっている。変更者・変更日時が追えない |
起きがちな事故 | 監査対応・内部統制で指摘 / 不正・ミスの原因特定ができない |
現場でのチェック方法 | 「先月15日時点のデータを再現してください」に即答できるか? |
解決の方向性 | バージョン履歴・操作ログが取れる仕組みへ(SharePoint / システム / SaaS) |
稟議で使えるフレーズ:「証跡を出せない状態はコンプライアンス上のリスク。指摘を受けてからでは遅い」
③権限設計
項目 | 内容 |
よくある症状 | 「このセル触らないで」が口頭ルール。新人が知らずに編集して事故 |
起きがちな事故 | マスタ誤編集、計算式破壊、責任の所在が曖昧 |
現場でのチェック方法 | 新人に「どこを編集していい?」と聞いて即答できるか |
解決の方向性 | Excel保護+運用設計、閲覧/編集分離、ロールベース権限のあるSaaS/業務システム |
稟議で使えるフレーズ: 「暗黙ルールは引き継ぎで必ず事故る。仕組みで防ぐべき」
④参照整合性
項目 | 内容 |
よくある症状 | VLOOKUPが#REF、外部参照リンク切れ |
起きがちな事故 | 壊れた数字のまま報告→意思決定が誤る |
現場でのチェック方法 | 「リンクの編集」で参照先が多い / 存在しないパスがある |
解決の方向性 | DB化・マスタ一元化・ETL等で連携を自動化 |
稟議で使えるフレーズ: 「参照切れに気づかず出した数字が誤っていたら、対外信用問題になります」
⑤障害復旧
項目 | 内容 |
よくある症状 | バックアップは取っているが、戻し方を誰も知らない/復旧テスト未実施 |
起きがちな事故 | 消失後に“実は復旧できない”と判明→業務停止 |
現場でのチェック方法 | 「今消したら1時間以内に復旧できますか?」にYesと言えるか |
解決の方向性 | 自動バックアップ+復旧手順書+定期テスト、クラウドの版管理 |
稟議で使えるフレーズ:「復旧手順が担当者の頭の中だけなのは、観点で問題です」
具体例:Before / After
【例1】受発注管理(製造業・従業員20名)
Before(Excel運用) | After(SaaS導入) | |
状況 | 受注→製造→出荷を1つのExcelで管理。営業・製造・出荷の3部門が同時アクセス | クラウド型の受発注システムへ移行 |
問題観点 | ①同時編集(月10回以上の競合) ②監査ログ(出荷ミス時に原因追跡不可)、④参照整合性(在庫マスタとのリンク切れ) | 同時編集の競合を抑止(排他/同時編集)、変更履歴・証跡を自動記録、 在庫マスタ連携をシステム連携で安定化 |
移行効果 | 同時編集の待ち・競合対応が発生。 変更の追跡が困難。 参照切れにより集計が壊れるリスク | 同時編集の待ち時間ゼロ化、 変更履歴の完全記録、マスタ連携の自動化 |
判定スコア | 18点(システム化優先) | 3点(継続OK) |
【例2】案件・顧客管理(広告代理店・従業員15名)
Before(Excel運用) | After(部分移行+運用設計) | |
状況 | 案件ごとにExcelファイルを作成。 顧客マスタは別ファイルで管理 | 顧客マスタのみSaaS化、案件管理はExcel継続(ガードレール追加) |
問題観点 | ③権限(誰でも顧客情報を編集可能)、 ④参照整合性(顧客マスタ参照が頻繁に壊れる)、 ⑤障害復旧(担当者退職時にファイル所在不明) | 顧客マスタをSaaSに集約し権限を分離。 参照元を一本化してリンク切れを抑止。 案件Excelは「参照専用」運用+保管/バックアップ手順を明文化 |
移行効果 | 顧客情報の誤編集リスクが高い。 参照切れでデータ不整合が起きる。 ファイル所在が属人化 | 顧客マスタの権限制御、参照の安定化。案件Excelは「読み取り専用で参照」に変更 |
判定スコア | 14点(部分移行推奨) | 5点(継続OK) |
ポイント
例2のようにすべてをシステム化しなくても「高リスク観点だけ対処」で十分なケースも多いです。
よくある誤解(FAQ)
Q1. 「Excelはやめるべき」?
A. いいえ。 Excelが最適なケースは多くあります。
利用者が3名以下で同時編集が発生しない
短期プロジェクト(3ヶ月以内)で要件が固まっていない
頻繁にフォーマット変更が必要(柔軟性重視)
「Excelの苦手領域を理解して使い分ける」 が正解です。
Q2. 「システム導入には数百万円かかるのでは?」
A. 必ずしもそうではありません。
SaaSなら月額課金で開始できる
ただしサービスによっては最小契約ユーザー数があり、想定よりコストが上振れする場合があります(例:kintoneはコースによって最小ユーザー数が設定されています)。
重要なのは「現状のロス(人件費・事故対応・信用コスト)」と比較することです。
Q3. 「現場がExcelに慣れているから変えられない」
A. 段階的移行という選択肢があります。
「入力はExcel、集計はシステム」などハイブリッド運用から始めると抵抗を最小化できます。
Q4. 「IT部門がないから自分たちでは判断できない」
A. だからこそ外部の専門家を使う価値があります。
内製で迷い続けるより、要件整理だけでも壁打ちした方が結果的に早く・安く進みます。
Q5. 「うちは特殊な業務だからパッケージは合わない」
A. 本当に特殊かどうか、整理してみる価値はあります。
要件整理すると「8割標準・2割カスタム」と分かることも珍しくありません。
次のアクション:現場で1週間でできること
システム移行の意思決定は、いきなりできなくて当然です。
まずは 「判断材料を揃える」 ことから始めましょう。
1週間チェックリスト
Day | やること | 所要時間 |
Day 1 | 本記事のスコアリングを実施し、合計点を出す | 15分 |
Day 2 | 対象Excelの「最終更新者」「更新頻度」「関係者数」を1週間記録開始 | 5分/日 |
Day 3 | 「このファイルが消えたら復旧できるか?」を担当者にヒアリング | 30分 |
Day 4 | 過去1年の「Excelトラブル」を棚卸し(件数・影響・復旧時間) | 30分 |
Day 5 | スコア+トラブル実績+ロス換算を“1枚”にまとめる | 30分 |
Day 6-7 | 上長・経営層に「現状報告」として共有(意思決定を求めない) | 15分 |
ポイント
いきなり「システム入れましょう」ではなく、「現状こうなっています」というファクトの共有 から始めると、社内の合意形成がスムーズです。
最後に
Excelをやめる/続けるは意見ではなく“状態”で決まります。
まずは今回のスコアと1週間の記録(更新頻度・トラブル件数・復旧可否・ロス換算)を揃えて「うちの現状はこうです」と事実を共有してください。数字が出れば、議論は前に進みます。
そして合計点が高かった場合でも、いきなり全面システム化は不要です。事故を起こしている(または起こしそうな)観点から順に、“高リスクだけを最小コストで潰す”のが最短ルートです。
もし「どこから手を付けるべきか」「SaaSで足りるのか」「要件が整理できない」が壁なら、要件整理の段階だけでも外部と壁打ちする価値があります。
稟議が通らない原因の多くは“製品選び”ではなく“論点と根拠の不足”だからです。まずはあなたの現場のスコアを出してみましょう。数字が次の一手を決めてくれます。




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